分散システム
公開日: 2025/06/03
分散システムとは?その仕組みと実用例
はじめに
現代のWebサービスや大規模アプリケーションの裏側では、「分散システム」という仕組みが欠かせません。
1台のサーバーで全てを処理するのではなく、複数のコンピュータが協力して処理を行うことで、スケーラビリティや可用性を高めるのが特徴です。
本記事では、分散システムの基本から応用までをわかりやすく解説します。
基本情報・概要
分散システム(Distributed System)とは、複数の独立したノード(計算機)がネットワークを介して協調動作し、全体として1つのシステムのように振る舞う構成のことです。
各ノードは独自に計算や記憶を行いながら、他のノードと通信してタスクを分担します。
- 主な構成要素:
- ノード(サーバー、コンテナなど)
- 通信プロトコル(TCP/IP、gRPCなど)
- 分散ストレージ(例:Cassandra, HDFS)
- 分散処理エンジン(例:Apache Kafka, Hadoop)
比較・分類・特徴の表形式まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
スケーラビリティ | 水平方向の拡張(ノード追加)により性能向上 |
フォールトトレランス | 一部のノード障害が全体の停止につながらない冗長構成 |
一貫性モデル | 強い一貫性、最終的な一貫性、CAP定理とのバランスが必要 |
CAP定理とは、Consistency(整合性)、Availability(可用性)、Partition Tolerance(分断耐性)のうち、同時に3つを完全には満たせないという原理です。
深掘り解説
実用例:ユーザー認証APIの構成例
シングルサーバー構成では負荷集中時にダウンのリスクがあります。これを分散システム化すると、以下のような構成になります:
このように、処理・保存・通信を複数ノードで分散することで、耐障害性と性能を両立できます。
応用・発展的な使い方
- マイクロサービスアーキテクチャ:サービス単位で独立運用し、スケーラブルな開発を実現
- Kubernetesクラスタ:コンテナをノードに自動配置して、柔軟なスケーリングと回復性を提供
- イベント駆動設計(EDA):Apache Kafkaなどで非同期にイベントを処理し、疎結合な設計を可能に
- グローバル分散:CDNやGeo DNSを活用して地理的に離れたノード配置も可能に
よくある誤解と注意点
- 分散化=高可用とは限らない(設計ミスで単一障害点が生まれることも)
- 一貫性と可用性はトレードオフ(特に金融系などは要注意)
- モニタリングとトレーシングが複雑化(例:OpenTelemetryを活用)
- ネットワーク通信の信頼性は保証されない(タイムアウトや再送制御の実装が必要)
まとめ
分散システムは現代のスケーラブルで堅牢なサービスの中核技術です。
その設計には多くの考慮点がありますが、正しく構築すればパフォーマンスと可用性を劇的に向上させることができます。
これからのシステム設計では、分散構成の理解と適用がますます重要になっていくでしょう。