マイクロサービス
公開日: 2025/06/03
マイクロサービスとは?分散型アーキテクチャでスケーラブルな開発を実現
はじめに
大規模かつ複雑なシステムを柔軟に開発・拡張するためのアーキテクチャとして注目されているのが「マイクロサービス」です。
従来のモノリシック構造に代わり、独立性の高い小さなサービス群で全体を構成するこの設計思想は、クラウドネイティブ時代の基盤とも言えます。
この記事では、マイクロサービスの定義、特徴、設計ポイント、導入時の注意点を解説します。
基本情報・概要
マイクロサービス(Microservices Architecture)とは、1つの大きなアプリケーションを、独立してデプロイ可能な小さなサービスの集合として構築する手法です。
- 各サービスは独自のデータベース・ロジックを持ち、疎結合に通信
- APIやメッセージングでサービス同士が連携
- 多言語・多技術スタックの混在も可能(Polyglot)
比較・分類・特徴の表形式まとめ
特徴 | マイクロサービス | モノリシック |
---|---|---|
アーキテクチャ | サービスを分割 | アプリケーションが一体化 |
デプロイ単位 | サービス単位で個別に可能 | 全体を一括ビルド・デプロイ |
スケーリング | サービス単位で水平スケーリング可能 | 全体が対象のためコスト高 |
技術スタック | サービスごとに自由(Polyglot) | 統一されがち |
障害の影響範囲 | 部分的(限定的) | 全体へ波及する可能性あり |
深掘り解説
典型的な構成例
- API Gateway:外部からの入口、ルーティングと認証の役割
- 各サービス(User, Product, Orderなど):独立して開発・デプロイ可能
- データベース分離:各サービスが自分のDBを所有(共有しない)
- サービス間通信:HTTP/RESTやgRPC、非同期ならKafkaなどのメッセージング
マイクロサービスの設計原則
- Single Responsibility Principle(単一責任)
- Autonomous Teams(独立したチームごとに担当)
- Smart Endpoints and Dumb Pipes(ロジックはサービス側に)
- Decentralized Governance(技術選定の自由)
- Failure Isolation(障害の局所化)
応用・発展的な使い方
- サービスメッシュの導入(Istioなど):通信の可視化・暗号化・認証を統一管理
- CI/CDの分散化:サービスごとにパイプラインを分けて高速リリース
- Observabilityの強化:ログ、メトリクス、トレースを統合監視(例:Prometheus + Grafana + Jaeger)
- Kubernetesとの連携:サービスのオーケストレーションと自動復旧を実現
よくある誤解と注意点
- 分割すればよいわけではない → 明確な境界と設計指針が必要
- 過剰な分割は逆に複雑化を招く(“マイクロ”の適正サイズ)
- サービス間の通信エラー対策(リトライ、タイムアウト、サーキットブレーカーなど)が不可欠
- チーム構成やリポジトリ戦略(モノレポ vs マルチレポ)も初期設計が重要
まとめ
マイクロサービスは、開発スピードの向上、スケーラビリティの確保、障害耐性の強化といった多くの利点を持つアーキテクチャです。
その一方で、設計・運用の難易度が高く、チーム体制や開発文化の成熟も必要です。
「なぜ分けるのか」を明確にし、スモールスタートから段階的に導入していくことが成功の鍵です。