ロードバランサー
公開日: 2025/06/03
ロードバランサーとは?トラフィック分散で高可用性を実現する仕組み
はじめに
WebサービスやAPIのアクセスが集中すると、サーバーの負荷が偏って処理が遅延したり、サービス停止につながるリスクがあります。
この課題を解決するために活用されるのが「ロードバランサー(負荷分散装置)」です。
この記事では、ロードバランサーの役割、種類、設定のポイントについてわかりやすく解説します。
基本情報・概要
ロードバランサーとは、クライアントからのリクエストを複数のサーバーに分散することで、システム全体のパフォーマンスと可用性を向上させる装置・機能のことです。
- 主な目的:
- 負荷の均等化(スケーラビリティ向上)
- 冗長構成による可用性の確保
- 障害時の自動フェイルオーバー
比較・分類・特徴の表形式まとめ
分類 | 説明 | 主な用途 |
---|---|---|
L4ロードバランサー | TCP/UDPレベルでIPアドレスやポートによる制御 | ゲームサーバー、低レイヤー通信 |
L7ロードバランサー | HTTP/HTTPSレベルでURLやCookieに基づく振り分け | Webアプリケーション、APIゲートウェイ |
ハードウェア型 | 専用アプライアンス(F5、A10など) | 大規模・高セキュリティな現場向け |
ソフトウェア型 | Nginx、HAProxy、Envoy など | 柔軟でコストを抑えた構成が可能 |
クラウド型 | AWS ELB、GCP Load Balancerなど | オートスケーリングと連携しやすい |
深掘り解説
ラウンドロビン vs 最小接続数
ロードバランサーの振り分けアルゴリズムにはいくつか種類があります:
- ラウンドロビン:順番にサーバーへリクエストを割り当てる(単純・広く使用)
- 最小接続数(Least Connections):現在の接続数が最も少ないサーバーへ分配
- IPハッシュ:クライアントIPに基づいて固定的に割り当て(セッション維持)
- 加重分散(Weighted Round Robin):サーバーごとに性能差を加味して配分
ヘルスチェック機能
- ロードバランサーは定期的にサーバーの状態(死活監視)をチェック
- 異常が検出されたサーバーは振り分け対象から除外(フェイルオーバー)
- HTTPステータスやTCP応答をもとに判断される
応用・発展的な使い方
- SSL終端(SSL Offloading):ロードバランサーでSSL通信を解除して内部通信を高速化
- Webアプリケーションファイアウォール(WAF)との統合:セキュリティ強化
- オートスケーリングとの連携:クラウド上でスケーラブルな構成を自動実現
- Blue-Greenデプロイメント:ロードバランサーの切替で安全に新バージョンへ移行
よくある誤解と注意点
- ロードバランサーが単一障害点になる可能性がある → 冗長構成が必須
- セッション情報の保持が必要な場合、Sticky Sessionの設計に注意
- SSL証明書の管理がロードバランサー側に集中することもある
- ヘルスチェックの頻度としきい値を誤ると誤検出による停止が起きる
まとめ
ロードバランサーは、スケーラブルかつ堅牢なサービス運用に欠かせない存在です。
L4・L7の違いやアルゴリズムの特性を理解し、目的に合った構成を設計することで、安定したシステム運用を実現できます。
オンプレでもクラウドでも、今後の拡張性を見据えたロードバランサーの導入を検討していきましょう。