SLA
公開日: 2025/06/03
SLAとは?サービス品質を定義する契約とその重要性
はじめに
クラウドサービス、SaaS、インフラ運用──これらを利用または提供する際に頻繁に登場するのが「SLA(Service Level Agreement)」です。
SLAは、サービスの品質や可用性を数値で定義し、サービス提供者と利用者の責任を明確にする契約文書です。
この記事では、SLAの基本的な意味、記載内容、KPIとの違い、設計と運用上のポイントをわかりやすく解説します。
基本情報・概要
SLA(Service Level Agreement)とは、サービスの稼働率、応答時間、復旧時間などの“提供水準”をあらかじめ明記した契約のことです。
- 主にB2Bの契約において用いられる
- サービスの「品質保証ライン」を可視化する役割
- 不達成時は、返金・割引・違約金などの**SLAクレジット(補償)**が発生する場合もある
比較・分類・特徴の表形式まとめ
項目 | 内容の例 |
---|---|
可用性(Availability) | 「月間稼働率99.9%以上を保証」など |
応答時間(Response Time) | 「APIは1秒以内で応答すること」など |
復旧時間(RTO) | 「障害発生後30分以内に復旧を開始する」など |
データ保持期間(Retention) | 「ログデータは30日以上保持する」など |
サポート体制(Support) | 「24時間365日対応」や「営業時間内のみ対応」など |
SLAクレジット | 「SLA未達時に翌月請求額の10%を返金」など |
深掘り解説
SLAに含まれる主な項目
- 可用性(例:月間稼働率):
(全体稼働時間 - ダウン時間) ÷ 全体稼働時間
- MTTR(平均修復時間) / MTBF(平均故障間隔):信頼性を表す指標
- SLO(Service Level Objective):SLAの内部目標(SLAの前段階)
- SLI(Service Level Indicator):実測値(SLO達成度を数値化)
実際のSLA例(AWS EC2の場合)
- 可用性99.99%を保証
- 達成できなかった月はサービスクレジットで補償
- ダウンタイム報告はユーザーから申請が必要
SLO・SLIとの関係
- SLA:対外的な契約(守らなければペナルティ)
- SLO:社内での目標値(通常はSLAより厳しめ)
- SLI:その達成度を測るための実測データ(例:成功リクエスト率)
応用・発展的な使い方
- マルチリージョン構成でSLA向上
- フェイルオーバー設計でダウンタイム最小化
- KPIと連動したアラート設計(SLO違反を即通知)
- SaaS提供側の契約差別化要素として利用(競合より高SLA提示)
よくある誤解と注意点
- SLA達成=ユーザー満足ではない(実体験と一致しないケースあり)
- 高SLAほど設計・運用コストが増加(99.99%→99.999%は難易度大)
- SLAは無償での品質保証ではなく契約リスク管理の一種
- 提供側はSLA未達時の責任範囲と免責条件を明記することが重要
まとめ
SLAは、サービスの信頼性と提供責任を数値で明文化した“品質の契約書”です。
ユーザーにとっては安心材料、提供者にとっては責任範囲の明確化ツールとして機能します。
SLOやSLIと組み合わせて、運用・改善・信頼構築につなげましょう。