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Rustでのシステム開発

公開日: 2025/06/03

Rustでのシステム開発:安全性とパフォーマンスを両立する近代的言語

はじめに

システムプログラミングといえばCやC++が長らく主流でしたが、近年注目を集めているのがRustです。Mozillaが開発したこの言語は、安全性とパフォーマンスの両立を目的に設計されており、OSや組込み、WebAssemblyなどの低レベル領域でも採用が進んでいます。本記事ではRustの特徴と、実際のシステム開発での活用例を紹介します。

基本情報・概要

Rustはコンパイル型・静的型付けの言語で、以下の特徴を持ちます:

  • メモリ安全性(ガベージコレクションなし)
  • 所有権とライフタイムによる明確なメモリ管理
  • C/C++並みの高パフォーマンス
  • コンパイル時チェックによる高い安全性
  • クロスコンパイルやFFIに強い

Linuxカーネル、Webブラウザのエンジン(Servo)や仮想マシン、CLIツール、IoTデバイス制御などに使われています。

比較・分類・特徴の表形式まとめ

項目RustC/C++
メモリ管理所有権システムで手動制御手動(new/delete、malloc/free)
安全性高(null・データ競合を防ぐ)低(未定義動作やクラッシュの恐れ)
パフォーマンス高(ゼロコスト抽象)
エコシステムCargoによるパッケージ管理が容易分散的・手動ビルドが多い
学習コスト中〜高(概念が多い)

深掘り解説

Rustの基本的なコードを見てみましょう。

fn main() {
    let name = "Rust";
    println!("Hello, {}!", name);
}

これを

main.rs
に保存し、以下で実行:

rustc main.rs
./main

所有権の例:

fn main() {
    let s = String::from("hello");
    takes_ownership(s);
    // println!("{}", s); // エラーになる:sの所有権は移動済み
}

fn takes_ownership(some_string: String) {
    println!("{}", some_string);
}

所有権により二重解放やUse-After-Freeが防がれます。

並列処理も安全に記述可能です:

use std::thread;

fn main() {
    let handle = thread::spawn(|| {
        for i in 1..5 {
            println!("spawned thread: {}", i);
        }
    });

    for i in 1..5 {
        println!("main thread: {}", i);
    }

    handle.join().unwrap();
}

応用・発展的な使い方

  • OS開発(例:Redox OS)
  • WebAssembly生成(Yew、Leptosなど)
  • サーバーサイド開発(Actix Web, Axum)
  • CLIツール(ripgrep, bat, exa)
  • C/C++ライブラリとの連携(FFI)

Rustは安全性と性能が問われる領域すべてで応用可能で、特にセキュリティ要件の厳しい分野で強みを発揮します。

よくある誤解と注意点

  • Rustは難しい:所有権とライフタイムの概念が最初の壁になりますが、公式ドキュメントとコンパイラのメッセージが優秀なので継続学習が可能です。
  • ランタイムが重い:実は非常に軽量で、最小限の標準ライブラリで動作可能です。
  • 小規模には向かない:実は簡単なCLIツールにも最適です。

まとめ

Rustは「安全性」と「高パフォーマンス」を両立させた、21世紀のシステム開発に最適な言語です。学習曲線こそありますが、一度理解すればC/C++には戻れない快適な開発体験が待っています。まずは小さなCLIツールから始めて、徐々に本格的なシステム構築へ挑戦してみてください。