要件定義
公開日: 2025/06/03
要件定義とは?プロジェクト成功を左右する最重要フェーズの進め方
はじめに
システム開発プロジェクトの成否は、「最初の要件定義で8割が決まる」と言われるほど、要件定義は極めて重要な工程です。
顧客が「本当に必要としていること」を的確に言語化し、設計・実装の土台とするこのフェーズでは、技術力よりも対話力・理解力が問われます。
本記事では、要件定義の基本、進め方、注意点を具体的に解説します。
基本情報・概要
要件定義とは、システムに求められる機能・性能・運用ルールなどを明文化し、開発対象の全体像を合意形成する工程です。
分類は大きく以下の2つに分けられます:
-
業務要件(ビジネス要件)
- 業務上の課題・目的・改善すべき内容
- 例:売上をリアルタイムに集計したい、紙の帳票を廃止したい
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システム要件(機能・非機能要件)
- 実装すべき処理やUI、応答性能、可用性、セキュリティなど
- 例:CSV出力機能、3秒以内にレスポンス、24時間365日稼働
比較・分類・特徴の表形式まとめ
種類 | 内容 | 成果物例 |
---|---|---|
機能要件 | システムが「何をするか」 | 画面一覧、処理フロー、ユースケース図 |
非機能要件 | システムの「性能・制約・運用条件」 | SLA、セキュリティ要件、運用体制定義 |
業務要件 | 業務視点でのゴールや背景 | 課題ヒアリングシート、業務フロー図 |
外部インターフェース | 他システムとの連携仕様 | API仕様書、バッチ連携定義書 |
深掘り解説
要件定義の進め方
- 関係者ヒアリング:エンドユーザー、業務担当、運用担当などから多面的に情報収集
- 現状業務の可視化:As-Isの業務フローを把握し、課題点を明確にする
- ゴール設定とTo-Be設計:新システムでどう変えたいかを整理
- 機能の洗い出しと優先度付け:MUST / SHOULD / WANTで分類
- 非機能要件の明文化:セキュリティ、性能、保守性などの要求を定義
- 合意形成と文書化:要件定義書としてドキュメント化し、承認を得る
よく使われる成果物
- 要件定義書
- ユースケース図(UML)
- 業務フロー図(BPMNなど)
- データ項目一覧
- UIワイヤーフレーム
応用・発展的な使い方
- プロトタイピングと併用:UIモックを使って認識のズレを減らす
- ユーザーストーリー形式で整理:アジャイル開発向けに活用
- 要求管理ツールを使う:Backlog、Confluence、Jiraなどと連携
- 変更管理ルールの整備:要件変更に柔軟かつ慎重に対応する体制構築
よくある誤解と注意点
- 「何を作るか」は決まっている前提で始めてしまう(課題整理が不十分)
- 開発視点だけで要件をまとめると、実運用で破綻しやすい
- ユーザーが言ったことを鵜呑みにするだけでは不十分(背景の意図が重要)
- 「非機能要件」の軽視 → 性能やセキュリティ要件はトラブルの元になりやすい
まとめ
要件定義は、システムの“設計図”であり、ユーザーと開発チームをつなぐ最初の共通言語です。
この工程を丁寧に進めることで、後続工程の手戻りを減らし、品質・予算・納期の全てに良い影響をもたらします。
技術よりも対話と理解が問われるこのフェーズを、確実に、丁寧に実施することが、成功への第一歩です。