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MVCとクリーンアーキテクチャ

公開日: 2025/06/03

MVCとクリーンアーキテクチャ:構造化設計の考え方と違いを理解しよう

はじめに

Webアプリケーションの構造を整理する際、代表的な設計パターンとしてよく耳にするのがMVC(Model-View-Controller)クリーンアーキテクチャです。
どちらも責務分離を通じて保守性と拡張性を高めることを目的としていますが、その考え方と適用範囲には明確な違いがあります。
本記事では、両者の構成・思想・メリットと適材適所の選び方を整理します。

基本情報・概要

  • MVC(Model-View-Controller)
    プレゼンテーション層を中心に責務を「Model(データ)」「View(表示)」「Controller(入力)」に分ける構成。GUI系フレームワークやWeb開発で広く採用。

  • クリーンアーキテクチャ
    Robert C. Martin(通称 Uncle Bob)提唱。依存の向きを内側(ビジネスルール)に閉じることを重視し、柔軟性・テスト性・拡張性を最大化。

比較・分類・特徴の表形式まとめ

項目MVCクリーンアーキテクチャ
分離対象プレゼンテーション層の責務分離システム全体の責務と依存の方向性の明確化
主な層Model, View, ControllerEntity, UseCase, Interface Adapter, Framework
依存方向双方向 or フレームワーク依存常に内側(エンティティ層)に向かって依存
適用範囲Webアプリ、UI処理、単一アプリ業務系アプリ、マイクロサービス、モジュール分割全般
学習コスト中〜高(抽象化・層分離に慣れが必要)

深掘り解説

  • MVCの基本構成(Express + EJSの例):

      app.get("/users/:id", async (req, res) => {
          const user = await UserModel.findById(req.params.id); // Model
          res.render("user", { user });                         // View
      });
    
    • Controller:ルーティングとリクエストハンドリング
    • Model:DBやロジック(Mongoose, Sequelizeなど)
    • View:テンプレートエンジン(EJS, Handlebars, etc)
  • クリーンアーキテクチャ構成の例(Node.js系):

    /src ├── domain → Entity層(ビジネスルール) ├── usecases → UseCase層(ユースケース処理) ├── interfaces → Interface Adapter層(Controller, Presenter) └── infrastructure → 外部I/O層(DB, API, フレームワーク依存)

    // UseCaseの例(Application層) export class GetUserUseCase { constructor(userRepository) { this.userRepository = userRepository; }

      async execute(id) {
          return await this.userRepository.findById(id);
      }
    

    }

  • 依存関係の向き

    フレームワークやDBからEntityへは直接依存せず、必ずインターフェースを介して注入(DI)します。

応用・発展的な使い方

  • MVCは小規模〜中規模のシステムで素早く構築したいときに有効
  • クリーンアーキテクチャは長期的な保守・変更コストの最小化に強い
  • NestJSやLaravelなどは内部的に「MVC + クリーンアーキテクチャの融合」的な構造を持つ
  • Hexagonal(Ports & Adapters)やDDDとも親和性が高いのはクリーンアーキテクチャ

よくある誤解と注意点

  • MVCはUIだけのパターンであり「アーキテクチャ」ではない:クリーンアーキテクチャは全体構造を設計するもの
  • クリーンアーキテクチャは「過剰設計になりやすい」→ まずはUseCase層の分離だけでも効果あり
  • どちらも目的は「責務の明確化とテストしやすさ」であり、目的を忘れた分離は逆効果

まとめ

MVCとクリーンアーキテクチャは、アプリケーションを構造化するための2つの有力アプローチです。

  • 迅速に構築・習得しやすいのがMVC
  • 拡張性・保守性・再利用性を重視するならクリーンアーキテクチャ

プロジェクトのスコープ、チーム構成、保守期間に応じて、最適なアプローチを選びましょう。