LT値(乳酸閾値)
公開日: 2025/06/04
LT値(乳酸閾値)
はじめに
「長い距離になると急にキツくなる」
「同じペースでも、ある瞬間から急に脚が動かなくなる」
そんな“スタミナ切れ”の正体とも言えるのが、**LT値(乳酸閾値)**です。LT値を理解し、適切な強度でトレーニングすれば、持久力は飛躍的に向上します。この記事では、LTの定義・測定方法・トレーニング活用法をわかりやすく解説します。
基本情報・概要
LT(Lactate Threshold:乳酸閾値)とは、血中乳酸濃度が急激に上昇し始める運動強度の境界点です。
この閾値を超えると、無酸素運動が優位となり、長時間の継続が困難になるため、持久系スポーツにおいて非常に重要な指標とされています。
項目 | 内容 |
---|---|
略称 | LT(Lactate Threshold) |
日本語表記 | 乳酸閾値 |
意味 | 有酸素運動 → 無酸素運動への切り替わりポイント |
閾値の目安 | 心拍数で表すと最大心拍数の80〜90%程度が多い |
比較・分類・特徴の表形式まとめ
指標 | 意味 | 役割 |
---|---|---|
LT(乳酸閾値) | 持久運動で乳酸が急増する限界点 | スタミナ/長距離パフォーマンスの鍵 |
VO₂Max | 最大酸素摂取量 | 心肺能力の上限値 |
HRR | 心拍予備域 | 個別の強度設定 |
深掘り解説
なぜLTが重要なのか?
- LTを超えると、乳酸が蓄積 → 疲労物質増加 → 持続困難
- トップ選手ほどVO₂Maxだけでなく、LTが高い強度に存在
- LTペースで走れる時間=レース後半の粘りに直結
LTの簡易的な推定方法(自宅・実走で可能)
方法①:20分TT法(実戦ペース測定)
- ウォームアップ15分
- 全力の持続可能なペースで20分ラン
- 平均心拍数・平均ペースを記録
- この平均心拍数の90〜95% ≒ LT心拍
- 平均ペース ≒ LTペース(テンポ走の基準)
方法②:会話限界テスト
- 「会話がギリギリ続く強度」=LTペースの目安
- 息切れ寸前の“ちょいキツい”ゾーン
応用・発展的な使い方
- テンポ走(LT走):LTペース × 20〜40分で“閾値向上”を狙う
- ビルドアップ走の終盤にLTゾーンを組み込む
- GarminなどでLTゾーン設定し、自動アラート活用
- LT向上 → フルマラソンの巡航ペースの底上げが可能に
よくある誤解と注意点
- 「VO₂Maxが高ければ持久力も高い」→ ×:LTが低いとすぐに失速する可能性あり
- 「LT走は毎日やれば効果的」→ ×:週1〜2回で十分/回復が重要
- 「LTは体感では測れない」→ △:“ややキツいが維持可能”で推定可能、計測精度には限界あり
まとめ
LT(乳酸閾値)は、「どこまで維持できるか」の基準点であり、レースペース・持久力設計の中核をなす重要な指標です。
VO₂Maxのような最大値ではなく、“持続できる限界”を高めることこそが市民ランナーの記録更新に直結します。
LTを知り、LTを鍛える――それが、苦しまずに速く走るための近道です。