探索
公開日: 2025/06/02
探索とは?──データの中から目的の値を見つけ出すためのアルゴリズム技法
はじめに
「データの中から欲しい情報を見つけたい」──それが**探索(Search)**の役割です。
小さな配列からの検索から、大量データベース、グラフ探索、ゲームAIまで、あらゆるアルゴリズムの基礎となるのが探索アルゴリズムです。
本記事では、代表的な探索手法の種類、特徴、計算量、使い分けのポイントまで、実例を交えてわかりやすく解説します。
基本情報・概要
探索とは、データ集合の中から特定の条件に合致する要素を見つけ出す処理です。
探索の効率は、アルゴリズムのパフォーマンスやユーザー体験を大きく左右します。
主な目的:
- 配列やリスト内の値を見つける
- 構造化データ(木・グラフ)内のノードを探索
- 条件に合致する要素を最小コストで発見
探索は「データの迷路から正しい道を探す技術」です。
比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)
探索法 | 特徴 | 計算量 | 適用条件 |
---|---|---|---|
線形探索(Linear Search) | 最初から順に調べる | O(n) | ソート不要、小規模データ向き |
二分探索(Binary Search) | 中央を基準に分割検索 | O(log n) | ソート済配列が必要 |
ハッシュ探索(Hash Search) | キーをハッシュして即座に参照 | O(1)(平均) | 高速な検索が必要、メモリ多め |
DFS/BFS(構造探索) | 木・グラフの全域探索 | O(V+E) | データ構造が階層・網状の場合 |
適切な探索法の選択は、データの種類・構造・検索頻度によって決まります。
深掘り解説
✅ 線形探索(Linear Search)
const arr = [3, 7, 2, 9]; const target = 9; const index = arr.findIndex(x => x === target); // => 3
- 単純だが O(n) と遅い
- ソート不要で、どんなデータにも使える汎用性
✅ 二分探索(Binary Search)
const arr = [1, 3, 5, 7, 9]; const target = 5; let left = 0, right = arr.length - 1; while (left <= right) { const mid = Math.floor((left + right) / 2); if (arr[mid] === target) return mid; if (arr[mid] < target) left = mid + 1; else right = mid - 1; }
- 高速(O(log n)) だがソート済み配列が前提
- アプリの検索機能、ID管理などでよく使われる
✅ ハッシュ探索(Hash Search)
const map = new Map(); map.set("apple", 100); console.log(map.get("apple")); // => 100
- 定数時間アクセス(平均)
- Key-value構造に最適
- 衝突管理とメモリ管理が必要
✅ DFS / BFS(グラフ探索)
-
DFS(深さ優先探索)
→ 再帰・スタック、探索順は深く潜る
→ パス探索、ツリー構造の処理に適 -
BFS(幅優先探索)
→ キュー使用、近い順に探索
→ 最短経路探索に強い(Dijkstraの基本)
function bfs(start) { const visited = new Set(); const queue = [start]; while (queue.length) { const node = queue.shift(); if (visited.has(node)) continue; visited.add(node); // 処理… queue.push(...node.neighbors); } }
応用・発展的な使い方
- Dijkstra法やA*などの最短経路アルゴリズム
- インデックス付きDBの内部構造(B木など)
- 全文検索やオートコンプリートのトライ木検索
- 近似探索(Nearest Neighbor)や正規表現探索
探索は**“データの大海原に、いかにして目標を見つけるか”という設計そのもの**です。
よくある誤解と注意点(任意)
- データがソートされていないのに二分探索を使ってしまう
- ハッシュのキー衝突や不適切なハッシュ関数
- 再帰DFSでスタックオーバーフローする設計
- 探索順序に依存したロジック設計で非決定的な動作を生む
探索は簡単そうで、スケーラビリティや制御性で差がつく分野です。
まとめ
探索アルゴリズムは、大量のデータから目的の値や構造を効率よく見つけ出すための必須技術です。
線形、二分、ハッシュ、構造探索などそれぞれに特性があり、データ構造や検索頻度に合わせた選択がパフォーマンスの鍵となります。
単なる検索処理を超え、最短経路・候補提案・構造解析など複雑な処理にも応用される探索技術の理解は、開発者の武器になります。