GraphQL
公開日: 2025/06/02
GraphQLとは?──必要なデータを、必要なだけ取得する次世代APIの仕組み
はじめに
REST APIを使っていて、「不要なデータまで含まれている」「複数リクエストを投げないと目的の情報が集まらない」と感じたことはありませんか?
そうした課題を解決するために登場したのが GraphQL。
本記事では、GraphQLの基本概念、RESTとの違い、設計思想、クエリ例、ユースケース、導入時の注意点までを網羅的に解説します。
基本情報・概要
GraphQLとは、クライアントが取得したいデータを、クエリで明示的に指定できるAPIクエリ言語であり、Facebookによって2015年に公開されました。
主な特徴:
- クライアント主導の柔軟なデータ取得
- 1回のリクエストで複数リソースにアクセス可能
- 型ベースのスキーマ設計(構造が明示的)
- クエリ/ミューテーション/サブスクリプションによる操作
GraphQLは「必要なものだけ、ひとまとめに取得」を実現するAPIスタイルです。
比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)
項目 | REST API | GraphQL |
---|---|---|
リクエスト構造 | エンドポイントごとに固定されたレスポンス | クエリで必要なフィールドだけ指定可能 |
データ取得 | 複数エンドポイントの合成が必要 | 単一エンドポイントでネスト・関連データ取得が可能 |
オーバーフェッチ | 起こりやすい(全データを返す) | 起こりにくい(必要な項目だけ選択) |
アンダーフェッチ | 複数リクエストが必要 | ほぼ回避可能(1回のクエリで完結) |
スキーマ定義 | 明示的でない(ドキュメントは別) | 必須:型定義されたGraphQLスキーマを中心に構築 |
GraphQLは「柔軟性と効率の両立」を実現する、現代的なAPIのアプローチです。
深掘り解説
✅ クエリ構文の基本(GraphQL)
query { user(id: "123") { name email posts { title published } } }
- 上記は「ユーザーの名前・メールアドレスと、その投稿一覧」を一度に取得するクエリ
- 取得する項目をクライアント側で明示的に制御可能
- サーバーのエンドポイントは1つ(通常
)/graphql
✅ データ登録・更新:Mutation
mutation { createUser(name: "田中", email: "tanaka@example.com") { id name } }
でデータ作成・更新・削除などを行うmutation
- 結果として返してほしいフィールドも同時に指定できる
✅ 双方向通信:Subscription
subscription { messageAdded { content sender } }
- WebSocketベースでリアルタイム通知を受け取る
- チャットや通知などの実装に最適
応用・発展的な使い方
- Apollo Server / GraphQL Yoga / GraphQL Mesh でのバックエンド構築
- Apollo Client / urql / Relay によるフロントエンド統合
- スキーマ駆動開発(Schema-First)と型安全な開発
- REST APIのGraphQLラップ(Wrapper API)
- GraphQL Federation / Gateway構成によるマイクロサービス統合
GraphQLは「大規模開発・複雑なクエリの整理」に強い設計です。
よくある誤解と注意点(任意)
- 「GraphQL = すべてに優れている」は誤解:単純なAPIではRESTの方がシンプル
- 認可やエラーハンドリングが複雑化しやすい:独自実装が必要な場合が多い
- N+1問題が起きやすい:リゾルバの設計で効率的に処理すべき(DataLoaderなど活用)
- キャッシュが難しい:RESTのようにURLベースでのキャッシュが効かない
GraphQLは**“柔軟性の代わりに複雑性が増す”構造**をどう設計で制御するかがカギです。
まとめ
GraphQLは、クライアントが「何を欲しいか」を宣言し、サーバーが「必要なものだけ返す」対話的なAPI設計です。
RESTとは異なる哲学で、フロントエンドとバックエンドの境界を柔軟にし、開発体験と効率を両立させることができます。
小さなユースケースから導入し、徐々にスキーマ設計・キャッシュ戦略・パフォーマンス最適化に広げていくのが成功の鍵です。