ハッシュ関数
公開日: 2025/06/03
ハッシュ関数とは?データを一方向に変換する暗号技術の基本
はじめに
パスワードの保存、電子署名、データの整合性チェック──
こうしたセキュリティやシステムの仕組みを支えているのが「ハッシュ関数」です。
本記事では、ハッシュ関数の基本的な仕組み、用途、代表的なアルゴリズム、注意点までをわかりやすく解説します。
基本情報・概要
ハッシュ関数とは、任意の長さのデータを固定長の値(ハッシュ値)に変換する関数です。
- 出力は一方向であり、元のデータを復元できない(不可逆)
- 同じ入力に対しては必ず同じハッシュ値が出力される
- 異なる入力は異なるハッシュ値になる(理想的には)
特徴的な性質:
- 衝突耐性(Collision Resistance):異なるデータが同じハッシュ値になる確率が極めて低い
- 第二原像困難性(Second Pre-image Resistance):同じハッシュ値を持つ別の入力を見つけるのが困難
- 一方向性(One-way Function):ハッシュ値から元のデータを逆算できない
比較・分類・特徴の表形式まとめ
アルゴリズム | 出力長 | 主な用途 | 現在の評価 |
---|---|---|---|
MD5 | 128ビット | 古いシステム、整合性チェック用 | 衝突が見つかり脆弱 |
SHA-1 | 160ビット | デジタル署名、SSL証明書(旧) | 既に非推奨 |
SHA-256(SHA-2) | 256ビット | パスワード保存、ブロックチェーン | 現在も安全性が高い |
SHA-3 | 可変長 | 次世代標準として期待 | 現在は普及途上 |
bcrypt / scrypt | 可変長 | パスワードハッシュ専用 | スローハッシュで安全 |
深掘り解説
なぜハッシュ関数が重要なのか?
- パスワードの保護:元のパスワードを保存せず、ハッシュ値だけを保存することで漏洩時のリスクを軽減
- 整合性チェック:ファイルの改ざんを検知(例:ファイルのMD5/SHA-256チェックサム)
- 電子署名の前処理:署名対象データをハッシュして、署名処理を軽量化
- ブロックチェーン技術:取引データとブロック同士の整合性を保証する重要要素
bcrypt/scrypt/Argon2 などの“スローハッシュ”
- 計算コストを意図的に高くすることで、総当たり攻撃(ブルートフォース)を防止
- パスワードハッシュ用には必須の考え方(SHA-256単体は非推奨)
応用・発展的な使い方
- ソースコードの整合性チェック(Gitのcommit ID)
- ファイルの重複検出(Deduplication)
- ハッシュテーブルによる高速検索
- キャッシュキーの生成
- TLS/SSLの証明書署名
よくある誤解と注意点
- ハッシュ関数は暗号化ではない(復号できない点に注意)
- 衝突が“理論上”あり得る → 実用上は強固なアルゴリズムを選ぶことが重要
- SHA-1やMD5は既に安全ではない → 現代用途ではSHA-256以上を使用推奨
- ハッシュ値の保存にもソルト(salt)を加えるべき(レインボーテーブル対策)
まとめ
ハッシュ関数は、セキュリティやデータ管理の中核にある非常に重要な技術です。
正しい使い方と安全なアルゴリズムの選定により、システムの堅牢性を大きく向上させることができます。
「元に戻せない変換」を活かして、現代の認証・保護・整合性チェックを支える技術を正しく理解し、活用していきましょう。