モジュール
公開日: 2025/06/02
モジュールとは?──コードの再利用と責任分離を実現する構造の基本単位
はじめに
プログラムが大きくなってくると、どこに何があるか分からない、修正の影響範囲が読めないといった問題が発生します。
そうした構造の混乱を防ぎ、再利用性・分離性・保守性を高める仕組みが「モジュール(Module)」です。
本記事では、モジュールの概念、使いどころ、JavaScript/TypeScriptでの実装方法、関連パターンまでを体系的に解説します。
基本情報・概要
モジュールとは、機能ごとにコードを分割し、他の部分と独立して管理・再利用できるようにした構成単位です。
主な目的:
- コードの再利用性の向上
- 関心の分離(Separation of Concerns)
- グローバル汚染の防止
- 機能単位でのテスト・管理の容易化
JavaScript/TypeScriptでは、ES Modules(
import
/export
)によって明確なモジュール化が可能です。
比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)
モジュールの構成要素 | 役割・説明 |
---|---|
エクスポート(export) | モジュール外に公開する関数・変数・クラスなど |
インポート(import) | 他のモジュールの機能を取り込む |
スコープの分離 | モジュール内の変数や関数は外部に影響を与えない |
単一責任 | 1つのモジュールが1つの責任(ドメイン)を担うのが理想 |
モジュールは**“意味のあるかたまり”としてコードを構造化する手段**です。
深掘り解説
✅ ES Modules(JavaScript/TypeScript)による基本例
-
math.js
export function add(a, b) { return a + b; } export const PI = 3.14;
-
main.js
import { add, PI } from './math.js'; console.log(add(2, 3)); // 5 console.log(PI); // 3.14
モジュールを使うことで、関数・定数などを他のファイルに明示的に共有しつつ、独立性を保てます。
✅ デフォルトエクスポートと名前付きエクスポート
-
デフォルトエクスポート(1モジュールにつき1つ)
export default function greet(name) { return `Hello, ${name}`; }
import greet from './greet.js';
-
名前付きエクスポート(複数可)
export function a() {} export function b() {}
import { a, b } from './file.js';
応用・発展的な使い方
- ドメインごとの機能分割(例:
,user/
,auth/
ディレクトリ)payment/
- モジュールの再エクスポート:
でまとめてindex.ts
export *
- Circular Dependency の回避:依存関係が循環しないよう設計を工夫
- DI(依存性注入)との併用:モジュールをより疎結合に
モジュール設計は、アプリケーションの成長に比例してその価値が増します。
よくある誤解と注意点(任意)
- 「すべてのファイルはモジュール」ではない:スクリプトとモジュールは明確に分かれる(
など)type="module"
- モジュール粒度が細かすぎる:1つの機能単位(責任)でまとめる
- 依存が密になりがち:依存関係の向きと数に注意
- 名前の衝突や曖昧さ:名前空間やスコープ管理が重要
モジュールは“使うため”でなく“構造を保つため”にも必要です。
まとめ
モジュールは、コードを構造的に分離し、再利用・保守・チーム開発を容易にする最小単位です。
関心ごとを分けることでコードの見通しがよくなり、機能ごとの責任が明確になります。
小さなスクリプトでもモジュール化の習慣をつけることで、将来的にスケーラブルな設計が可能になります。