並列処理
公開日: 2025/06/02
並列処理とは?──複数の処理を同時に実行する高速化の基本技術
はじめに
アプリケーションの高速化や、大量のデータを扱うタスクで重要になるのが「並列処理(Parallel Processing)」。
しかし、「非同期処理」や「並行処理」と混同されがちで、本質を理解している人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、並列処理の定義、並行処理との違い、マルチスレッド・マルチプロセスの活用法、JavaScript などでの実践までを明快に解説します。
基本情報・概要
並列処理とは、複数の処理を物理的に同時に実行することです。
複数のCPUコアやプロセス/スレッドを活用し、実行時間を短縮したり、処理能力を向上させる技術として使われます。
主な目的:
- パフォーマンスの向上(時間の短縮)
- 負荷の分散
- 高度なリアルタイム処理や大量データ処理の実現
並列処理は「本当に同時に走る“処理の並列化”」を意味します。
比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)
概念 | 説明 | 例 |
---|---|---|
並行処理 | 見かけ上同時に複数の処理を進める | JavaScript の非同期処理(1スレッド) |
並列処理 | 実際に複数のCPU・スレッドで同時に実行する | マルチスレッド、GPU計算、マルチプロセス |
非同期処理 | 結果が返ってくるのを待たずに処理を進める | fetch → then(), async/await など |
⚠️ 並列 ≠ 非同期、並列 ≠ 並行。“同時実行の実態”があるかどうかが違いです。
深掘り解説
✅ 並列処理の種類
-
マルチスレッド(同一プロセス内)
- メモリ共有が速くて軽量
- 同期制御(ロック)が必要
-
マルチプロセス(独立プロセス)
- 安定性と分離性が高い
- IPC(プロセス間通信)の設計が必要
-
GPU並列処理(SIMD/並列ベクトル演算)
- 数千単位の並列実行が可能
- 行列計算や機械学習に最適
✅ Node.jsにおける並列処理(Worker Threads)
const { Worker } = require('worker_threads'); new Worker(` const { parentPort } = require('worker_threads'); parentPort.postMessage('完了しました'); `, { eval: true }).on('message', console.log);
- Node.js では本来シングルスレッドだが、
により CPU並列化が可能worker_threads
- 重い計算処理などをメインスレッドから分離できる
✅ Webブラウザでの並列化(Web Workers)
const worker = new Worker('worker.js'); worker.postMessage('開始'); worker.onmessage = (event) => { console.log('完了:', event.data); };
- 背景で処理させることで UI をブロックしない
- メモリ共有はなく、postMessage で通信
応用・発展的な使い方
- 画像処理や音声解析などのCPUバウンド処理
- データの分割とマッピング(MapReduce 的処理)
- Webサーバのマルチプロセス構成(Node Cluster, Nginx worker)
- 機械学習・シミュレーション・ビッグデータ処理(GPUやクラウド並列)
並列処理は、“同時に処理できるもの”と“順序が必要なもの”の見極めが重要です。
よくある誤解と注意点(任意)
- 並列処理は常に速いとは限らない:起動・同期・通信のオーバーヘッドがある
- 共有データへの同時アクセスで競合が発生する:ロック・ミューテックスが必要
- スレッド数の増やしすぎは逆効果:CPUコア数に応じた適切な設計が重要
- Node.js の
は並列ではなく“非同期の並行実行”:CPUを使い切るわけではないPromise.all()
並列処理はパフォーマンスの切り札だが、**“設計次第で毒にも薬にもなる”**技術です。
まとめ
並列処理は、複数の処理を物理的に同時に実行することにより、性能を大幅に向上させる技術です。
非同期や並行とは異なる「実際の同時実行性」を持ち、正しく設計すれば Web サーバ、CLI ツール、データ処理系アプリケーションにおいて決定的な速度差を生みます。
ただし、コスト・競合・制御の複雑性が伴うため、処理の特性を見極めて“並列化する価値があるか”を判断することがプロフェッショナルの鍵です。