ドメイン駆動設計(DDD)
公開日: 2025/06/03
ドメイン駆動設計(DDD):複雑な業務を整理するための設計アプローチ
はじめに
「機能は動くけど、コードが読みづらい」「仕様変更に弱い」「どこを直せばいいかわからない」
そんな課題を解決するための強力な考え方が**ドメイン駆動設計(Domain-Driven Design/DDD)**です。
本記事ではDDDの基本思想、代表的な構成要素、導入のメリットと注意点を解説します。
基本情報・概要
DDDはEric Evansが2003年に提唱したソフトウェア設計手法で、業務ドメインを中心にシステム構造を組み立てるアプローチです。
「ドメイン」とは、対象となるビジネスや業務領域そのものを意味します。
- ビジネスルールと技術コードを明確に分離
- ユビキタス言語(共通語彙)を通じてエンジニアと非エンジニアが協働
- 境界づけられたコンテキスト(Bounded Context)で整理・モデリング
比較・分類・特徴の表形式まとめ
要素 | 内容・目的 |
---|---|
エンティティ | 識別子と状態を持つ、業務上の核となるオブジェクト |
値オブジェクト | 値だけを持ち、同値性で比較される使い捨ての概念 |
集約 | 不変条件を管理するルートオブジェクトとそれに属する要素群 |
ドメインサービス | エンティティや値オブジェクトでは表現しづらい処理の集合 |
リポジトリ | 集約の永続化と再構築を担当(DBとの橋渡し) |
アプリケーションサービス | ユースケースの実行単位、インフラやUIとは非依存 |
深掘り解説(Node.js例)
-
エンティティ:
class User { constructor(id, name, email) { this.id = id; this.name = name; this.email = email; } changeEmail(newEmail) { this.email = newEmail; } }
-
値オブジェクト:
class EmailAddress { constructor(value) { if (!value.includes("@")) throw Error("Invalid email"); this.value = value; } }
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リポジトリ:
class UserRepository { async findById(id) { // DBクエリなど } async save(user) { // DB保存処理 } }
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アプリケーションサービス:
class RegisterUserService { constructor(userRepo) { this.userRepo = userRepo; } async execute(dto) { const user = new User(dto.id, dto.name, dto.email); await this.userRepo.save(user); } }
応用・発展的な使い方
- Bounded Contextの整理:機能単位で明確に責任範囲を分離(例:会計、在庫、顧客など)
- CQRSとの併用:CommandとQueryの分離によりパフォーマンスと保守性を両立
- イベントソーシング:状態ではなくイベントの履歴で永続化
- ユビキタス言語の定着:ドキュメント、クラス名、DBスキーマも含めて命名統一
よくある誤解と注意点
- DDDは巨大なプロジェクト専用ではない:中規模でも適用可能。むしろ複雑性の高い業務領域に向く
- 「DDDをやってるから設計が正しい」は誤り:形だけ真似しても本質を理解しなければ効果なし
- 初期設計が重くなりすぎないよう注意:段階的な導入が現実的
まとめ
ドメイン駆動設計は、ビジネスロジックの複雑性を整理し、スケーラブルな設計を実現するための土台となります。
単なるコード構造の話ではなく、「業務知識と技術をつなぐ共通言語」であり、チームのコミュニケーション品質にも大きく貢献します。
少しずつ導入し、自分たちの業務に合ったDDDのスタイルを育てていきましょう。