アダプターパターンとは？──異なるインターフェースをつなぐ柔軟な変換機構

はじめに

新しいモジュールを導入しようとしたら、「期待していたインターフェースと合わない」──こんな経験はありませんか？
アダプターパターン（Adapter Pattern）は、互換性のないインターフェース同士を“変換してつなぐ”ための設計パターンです。
本記事では、アダプターの構造、用途、実装例、ファサードやデコレーターとの違いも交えて解説します。

基本情報・概要

アダプターパターンとは、既存のクラスやライブラリのインターフェースを、別のインターフェースに変換することで互換性をもたせる構造です。
「橋渡し役」「変換層」とも呼ばれ、再実装せずに流用するために活用されます。

主な目的：

• 互換性のないAPI同士を接続
• 既存コードを変更せずに再利用
• 外部ライブラリを自前コードに適合させる

比較・分類・特徴の表形式まとめ（任意）

アダプターは「“使えるようにする”ことが主目的の変換機構」です。

深掘り解説

✅ JavaScriptによる基本例

// 既存のクラス（そのままでは使いにくい）
class OldPrinter {
  printText(text) {
    console.log(`[旧印刷機] ${text}`);
  }
}

// 新しいインターフェースを期待するコード
class App {
  constructor(printer) {
    this.printer = printer;
  }

  run() {
    this.printer.print("Hello Adapter");
  }
}

// アダプター：旧クラスを新しいインターフェースに変換
class PrinterAdapter {
  constructor(oldPrinter) {
    this.oldPrinter = oldPrinter;
  }

  print(text) {
    this.oldPrinter.printText(text);
  }
}

const legacyPrinter = new OldPrinter();
const adapter = new PrinterAdapter(legacyPrinter);
const app = new App(adapter);
app.run();  // => [旧印刷機] Hello Adapter

• PrinterAdapter

  が「変換レイヤー」として機能
• クライアント（

  App

  ）は

  print()

  しか知らず、

  printText()

  に依存しない

アダプターは既存資産を“そのまま使えるように”整えるパターンです。

応用・発展的な使い方

• 外部APIとの整合：REST仕様やライブラリのAPIを内部フォーマットに変換
• DBラッパー実装：SQL系のドライバを共通インターフェースで扱う
• React/Vueへのレガシー連携：旧JSコードをAdapterでUIコンポーネントに適合
• 型変換層として利用（TypeScript）：データモデルの整形やフォーマット修正

アダプターは“変更せずに変換する”という現実的な設計ニーズに応える武器です。

よくある誤解と注意点（任意）

• 「Adapter＝コード再構成の手段」ではない：既存クラスを触らず使うのが本質
• Adapterの増加はメンテナンス負荷になる：共通インターフェースを意識する設計が重要
• 似て非なるFacade/Decoratorと混同しやすい：それぞれ目的と構造が異なる
• 変換コストが高くなる場合も：変換処理が複雑すぎないか検討が必要

アダプターは**“接続と互換”のための最小限の抽象化**を提供する存在です。

まとめ

アダプターパターンは、異なるインターフェース同士を変換して結びつけるための柔軟な設計パターンです。
自前コードを変えずに既存APIやライブラリを流用できるため、保守性と移行性を同時に高めることができます。
「変えるのではなく、つなぐ」──その発想が求められるとき、アダプターは最も現実的な選択肢になります。