プロセスとは？──OSがアプリを動かす単位とマルチプロセス設計の基本

はじめに

アプリケーションはどのようにして実行されているのでしょうか？
タスクマネージャーを見ると、たくさんの「プロセス」が動いていることに気づくかもしれません。
本記事では、**プロセス（Process）**というコンピューターにおける「実行の基本単位」について、スレッドとの違いや、Node.jsやブラウザでの活用方法、マルチプロセス設計のポイントまでわかりやすく解説します。

基本情報・概要

プロセスとは、OSによってメモリ空間や実行環境を与えられた、アプリケーションの実行単位です。
各プロセスは独立して動作し、他のプロセスとは原則としてメモリを共有しません。

主な特徴：

• 独立したメモリ空間とリソースを持つ
• 他のプロセスに影響されにくく、安定性が高い
• スレッドとは異なり、生成や通信にコストがかかる
• OSレベルで管理される（PID, メモリ, ファイルディスクリプタなど）

プロセスは「プログラムの実行に必要なすべてを持った“実行体”」です。

比較・分類・特徴の表形式まとめ（任意）

プロセスは独立性と安定性に優れた実行単位であり、スレッドは効率的だが密結合な実行構造です。

深掘り解説

✅ Node.jsにおける子プロセスの生成

Node.js では

child_process

モジュールを使ってプロセスを生成できます。

const { spawn } = require('child_process');

const ls = spawn('ls', ['-lh', '/usr']);

ls.stdout.on('data', (data) => {
  console.log(`出力: ${data}`);
});

ls.stderr.on('data', (data) => {
  console.error(`エラー: ${data}`);
});

• OSコマンドを独立したプロセスとして実行
• 子プロセスがクラッシュしても、親は影響を受けにくい

✅ マルチプロセス構成（例：Webブラウザ）

• モダンブラウザ（Chromeなど）は 1タブ1プロセスで構成
• 各タブ（プロセス）がクラッシュしても他のタブは無事
• サンドボックス化された設計によりセキュリティと安定性を両立

応用・発展的な使い方

• ワーカープロセスによる並列処理（Node.js Cluster）
• バッチ処理・ETL処理の独立化：メモリ大量使用時に本体と分離して安全に実行
• マイクロサービス化：1プロセス＝1サービス設計によるスケーラブルな運用
• プロセス間通信（IPC）：ソケットやファイルベースでデータ交換

プロセスは**“障害に強く、横に広げやすい構造”の中心**です。

よくある誤解と注意点（任意）

• マルチプロセス＝高速ではない：生成・通信のコストはスレッドより重い
• 共有メモリを前提にしないこと：状態共有は明示的に行う必要あり
• ゾンビプロセス（defunct）問題：子プロセス終了後に適切に解放しないと残る
• プロセス数の無制限増加は危険：CPUコア数やリソースと相談しながら設計を

プロセスは便利だが、「数より設計品質」が問われる対象です。

まとめ

プロセスは、アプリケーションの独立した実行単位として、安定性と信頼性の要を担う存在です。
スレッドよりも重い反面、障害の隔離・スケーラビリティ・セキュリティにおいて重要な役割を果たします。
Node.js などのシングルスレッド環境でも、子プロセスやワーカーを組み合わせることで、柔軟かつ効率的な並行設計が可能です。
設計の段階で「どこをプロセス分離すべきか？」を考えることで、堅牢で拡張可能なシステムにつながります。