ヒープ
公開日: 2025/06/02
ヒープとは?──動的メモリの確保と管理を担う柔軟なメモリ領域
はじめに
大きな配列や実行時にサイズが決まるデータ構造を使いたいとき、必要になるのが ヒープ(Heap) というメモリ領域です。
ヒープはスタックよりも自由で柔軟ですが、自動ではなく明示的な管理が必要になることもあります。
本記事では、ヒープの基本構造、スタックとの違い、動的アロケーション、ガベージコレクションとの関係、注意点までを詳しく解説します。
基本情報・概要
ヒープとは、プログラムの実行時にサイズや寿命が決まるデータを格納するメモリ領域です。
動的にメモリを確保(allocate)し、明示的に解放(free)する必要があるのが一般的です。
主な用途:
- 実行時にサイズが決まる配列や構造体の確保
- 長く保持したいデータ(関数スコープ外でも使用する値)
- 大量・大サイズデータの格納(画像、ファイル内容など)
ヒープは「自由に借りられるが、返すのも自己責任のメモリ空間」です。
比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)
メモリ領域 | 特徴 | 使用場面 |
---|---|---|
スタック | 自動確保・自動解放(関数スコープ) | ローカル変数、関数呼び出し情報 |
ヒープ | 明示的確保・明示的解放 | 動的配列、大きな構造体、実行時確定データ |
スタックが「短命かつ高速」なら、ヒープは「長命かつ柔軟」です。
深掘り解説
✅ C言語でのヒープ操作(malloc
/ free
)
malloc
free
int* arr = malloc(sizeof(int) * 100); if (arr == NULL) { perror("メモリ確保失敗"); exit(1); } arr[0] = 42; free(arr); // 手動で解放しないとリークする
やmalloc()
でヒープにメモリを確保calloc()
によって明示的に解放free()
- 解放を忘れると メモリリーク になる
✅ C++での new
/ delete
new
delete
int* ptr = new int; *ptr = 10; delete ptr;
/new[]
を使うと配列もヒープに確保できるdelete[]
- モダンC++では
などのスマートポインタによる自動管理が主流std::unique_ptr
✅ JavaScript / Python の場合
- メモリ確保は自動(明示的な malloc は不要)
- オブジェクト・配列・関数などの実体はすべてヒープに格納
- ガベージコレクタ(GC)が到達不能になったタイミングで回収
let obj = { a: 1 }; // ヒープに確保されている obj = null; // GCにより回収される対象に
応用・発展的な使い方
- オブジェクトプール:確保済メモリを再利用してアロケーション負荷を軽減
- アリーナアロケータ:大量確保・一括解放を最適化する設計
- 構造体のリンクやツリー構築:ポインタを使った複雑な構造の動的生成
- リアルタイムシステムでのメモリ制限:ヒープの動的確保を避ける方針もあり
ヒープは 柔軟性がある分、意識的に設計・管理すべき領域です。
よくある誤解と注意点(任意)
- 確保したら解放が必須(手動管理言語)
→ 解放忘れ=メモリリーク/2重解放=クラッシュの危険 - ガベージコレクタがある言語でもリークは起こり得る
→ 到達可能だが使っていない変数を残すとリークになる - ヒープ操作はコストが高い
→ アロケーションの頻度が高すぎるとパフォーマンス悪化 - スレッド間共有時に注意
→ ヒープ上のメモリを複数スレッドで扱うと競合が起きやすい
ヒープは自由と責任がセットのメモリ領域です。
まとめ
ヒープは、実行時に柔軟なサイズや寿命を持つデータを格納できるメモリ領域であり、C/C++では明示的に操作、GCを持つ言語では自動的に管理されます。
柔軟性の反面、メモリリークやパフォーマンス劣化の温床にもなりやすく、確保・使用・解放の設計が非常に重要です。
スタックとヒープの違いを理解し、用途に応じて使い分けられる設計力こそが堅牢なアプリケーションへの第一歩です。