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バックトラック

公開日: 2025/06/02

バックトラックとは?──探索空間を再帰的に進み、失敗したら引き返す賢い戦略

はじめに

パズル、迷路、ナップサック、組み合わせの列挙──
解の候補が膨大だが、すべてを調べるわけにはいかない。
そんなとき使われるのが「バックトラック(Backtracking)」という手法です。
本記事では、バックトラックの定義、仕組み、典型パターン、実装例、使いどころや注意点まで、再帰的思考と共に体系的に解説します。

基本情報・概要

バックトラックとは、解候補を1つずつ試しながら、失敗したら途中で引き返して別の選択肢を試す探索アルゴリズムです。
「前進 → 条件チェック → 失敗なら戻る → 次を試す」の繰り返しで、正しい解またはすべての解を見つけ出します

主な用途:

  • パズル(数独、N-Queenなど)
  • 組み合わせ生成(順列、部分集合)
  • グラフ探索(Hamiltonian path など)
  • 制約条件下の探索(制約充足問題:CSP)

バックトラックは「再帰と条件分岐を使った“知的な全探索”」です。

比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)

特徴説明
再帰的構造呼び出しごとに状態を進め、条件不一致なら戻る
解の枝刈りが可能条件に反する時点で探索を中断できる
解空間の完全走査も可能制限なければ全探索として機能
DFSベース深さ優先探索と密接な関係

バックトラックは「正解までの道を、間違えたら引き返してやり直す」という人間らしい探索法です。

深掘り解説

✅ 例:N-Queen問題(JavaScript)

function solveNQueen(n) {
  const board = [];
  const result = [];

  function backtrack(row = 0) {
    if (row === n) {
      result.push([...board]);
      return;
    }
    for (let col = 0; col < n; col++) {
      if (isSafe(row, col)) {
        board.push(col);
        backtrack(row + 1);
        board.pop();
      }
    }
  }

  function isSafe(r, c) {
    return board.every((col, row) =>
      col !== c && Math.abs(col - c) !== r - row
    );
  }

  backtrack();
  return result.length;
}
  • 各行にクイーンを1つ置くことを再帰的に試行
  • 条件に合わなければその枝を捨てる(枝刈り)
  • board.pop()
    が「引き返す=バックトラック」の操作

✅ 解空間と枝刈りの考え方

  • 解空間:すべての可能な選択肢(ツリー構造で表現)
  • 枝刈り(Pruning):失敗確定の選択肢を除外して効率化
  • 全探索でも条件付き全探索に進化できるのがポイント

応用・発展的な使い方

  • 数独、クロスワード、自動生成パズル
  • 部分集合・順列・組み合わせの列挙
  • 文法解析、バックトラッキングパーサ
  • AI探索・状態空間モデル(例:チェスの探索木)
  • 制約付きリソース割当て(例:時間割、タスク割当)

バックトラックは「試して失敗したらやり直す」という、探索の原始的かつ強力な戦略です。

よくある誤解と注意点(任意)

  • 単なる全探索との違いを理解する:条件による枝刈りが本質
  • 状態の復元(巻き戻し)を忘れると誤動作する
  • 再帰が深すぎるとスタックオーバーフローすることがある
  • 大量データでは指数時間になるため、実用では制限付き設計が必須

バックトラックは「暴力的な全探索ではなく、賢く動く再帰戦略」です。

まとめ

バックトラックは、すべての選択肢を“効率的に”試しながら、条件に合わないものは早めに捨てる再帰的探索戦略です。
アルゴリズムの中でも特に構造理解と実装の丁寧さが問われる技法であり、パズル・組み合わせ・制約問題といった幅広い場面で応用されます。
「何を試して」「どこで戻り」「どうやって次を選ぶか」を論理的に考えることが、バックトラックの設計力と再帰思考の真骨頂です。