オートスケーリング
公開日: 2025/06/03
オートスケーリングとは?リソースの自動増減で可用性とコストを最適化
はじめに
トラフィックの急増や処理量の変動に柔軟に対応する仕組みとして、多くのクラウドサービスで導入されているのが「オートスケーリング(Auto Scaling)」です。
アクセス状況に応じてインスタンスやコンテナの数を自動で増減させ、サービスの安定性とコスト効率を両立するこの技術は、現代のクラウドアーキテクチャに欠かせない要素となっています。
この記事では、オートスケーリングの仕組み、代表的な実装パターン、設計時の注意点を解説します。
基本情報・概要
オートスケーリングとは、システムの負荷や条件に応じてコンピューティングリソース(例:仮想マシン、コンテナ)を自動でスケールイン/スケールアウトする仕組みです。
- スケールアウト:リソースを増やす(負荷が高いとき)
- スケールイン:リソースを減らす(負荷が低いとき)
- トラフィックの波に合わせた動的対応が可能
対象:
- 仮想マシン(例:Amazon EC2、Google Compute Engine)
- コンテナ(例:Kubernetes Pod、ECS)
- サーバーレス関数(自動スケールが前提)
比較・分類・特徴の表形式まとめ
項目 | 水平方向スケーリング | 垂直方向スケーリング |
---|---|---|
内容 | インスタンスやコンテナの数を調整 | インスタンスの性能(CPU/RAM)を変更 |
実装のしやすさ | オートスケーリングで容易 | 一部クラウドで制限あり |
可用性の向上 | 高い(複数台構成で冗長化可能) | 1台構成では障害時に脆弱 |
コスト最適化 | 柔軟なリソース制御が可能 | 一時的なピークに対して過剰投資になりやすい |
深掘り解説
スケーリングのトリガー例
- CPU使用率が80%以上を5分以上継続
- メモリ使用率、ネットワークI/O量
- キューの長さ(例:SQS, Pub/Sub)
- カスタムメトリクス(例:リクエスト数、DB接続数)
AWSの代表的な構成
- Auto Scaling Group(ASG):EC2インスタンスの数を制御
- CloudWatch:メトリクス監視としきい値判定
- Application Load Balancer(ALB):スケーリングされたインスタンスにトラフィックを分散
- ターゲット追跡ポリシー:目標値(例:CPU70%)を維持するように自動調整
応用・発展的な使い方
- Kubernetes Horizontal Pod Autoscaler(HPA):Pod数をメトリクスに応じて増減
- Scheduled Scaling:事前にアクセス増が分かる場合は時間ベースで調整
- サーバーレスとの連携:Lambdaなどと組み合わせてピークタイムの処理をオフロード
- マルチAZ構成:スケーリングと高可用性を同時に確保
よくある誤解と注意点
- スケーリングは即時ではない(数分のラグがある)
- スケールインしすぎるとレスポンス遅延や再スケールが頻発(ヒステリシス設定が重要)
- 状態を保持するアプリはスケーリングに不向き(ステートレス化が必要)
- DBは自動スケーリングしにくい → Proxyやリードレプリカとの併用を検討
まとめ
オートスケーリングは、システムを“必要なときに必要なだけ動かす”ための現代的なインフラ運用戦略です。
アクセスの変動が激しいサービスや、コスト効率を求めるクラウド環境では特に有効です。
ステートレス設計、メトリクス設計、モニタリングといった周辺要素と併せて導入することで、柔軟かつ堅牢なスケーラビリティを実現できます。