暗号化
公開日: 2025/06/02
暗号化とは?──情報を守るためにデータを読み取れなくする技術
はじめに
パスワードがそのまま保存されていたら?
通信中のデータが誰でも読める状態だったら?
こうしたリスクを回避するために使われるのが「暗号化(Encryption)」です。
本記事では、暗号化の仕組み、種類(共通鍵・公開鍵)、代表的なアルゴリズム(AES, RSAなど)、使い方、設計上の注意点まで体系的に解説します。
基本情報・概要
暗号化とは、元の情報(平文)を、特定のルール(鍵)に従って第三者には意味の分からない形(暗号文)に変換する処理です。
暗号文は、対応する鍵がなければ復号できず、情報を盗み見られても内容を守れるようになります。
主な目的:
- 通信の盗聴防止(HTTPS)
- パスワードや機密情報の保護
- データ改ざん検出や認証基盤の構築
暗号化は「読めては困る情報を、“一時的に読めない状態”にする技術」です。
比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)
区分 | 説明 | 代表的手法 | 特徴 |
---|---|---|---|
共通鍵暗号方式 | 同じ鍵で暗号化・復号する方式 | AES, DES | 処理が高速、鍵の共有が課題 |
公開鍵暗号方式 | 鍵を分けて暗号化(公開)と復号(秘密) | RSA, ECC | 鍵の配布が容易、安全性が高い |
ハッシュ関数 | 一方向性変換(復号できない) | SHA-256, bcrypt | パスワード保存に利用 |
共通鍵は通信時のスピード重視、公開鍵は鍵配送の安全性重視です。
深掘り解説
✅ 共通鍵暗号(AESの例)
const crypto = require('crypto'); const key = crypto.randomBytes(32); const iv = crypto.randomBytes(16); const cipher = crypto.createCipheriv('aes-256-cbc', key, iv); let encrypted = cipher.update('Hello World', 'utf8', 'hex'); encrypted += cipher.final('hex');
は共通鍵暗号の代表格AES-256-CBC
- **IV(初期化ベクトル)**は同じメッセージでも異なる暗号文にするための乱数
✅ 公開鍵暗号(RSAの例)
- 公開鍵で暗号化 → 秘密鍵で復号
- 主に「鍵のやりとり(鍵交換)や署名認証」に使われる
- 実際の通信では「RSAで鍵共有 → AESで通信」が一般的(ハイブリッド暗号)
✅ ハッシュ化と暗号化の違い
比較点 | 暗号化 | ハッシュ化 |
---|---|---|
復号 | 可能 | 不可能(一方向性) |
主な用途 | 通信保護・機密保持 | パスワード保存・整合性検証 |
可逆性 | 可逆 | 不可 |
- パスワード保存には暗号化ではなくハッシュ化を使う
- bcrypt/scrypt などの**強化ハッシュ関数**が主流
応用・発展的な使い方
- HTTPSによるWeb通信の暗号化
- JWTトークンの署名と検証
- エンドツーエンド暗号(Signalプロトコル)
- ファイルの暗号化保存(ZIP, AES-GCM)
- IoTや組み込みにおける軽量暗号(ChaCha20など)
暗号化は単体で使うのではなく、鍵管理・署名・検証と組み合わせて活きる技術です。
よくある誤解と注意点(任意)
- 暗号化 ≠ 完全な安全性:鍵の漏洩や実装ミスが致命傷に
- 「自作暗号」はNG:安全性が検証された標準アルゴリズムを使うべき
- 鍵の保存方法が最重要:安全な保管がないと暗号化の意味がない
- HTTPS化だけでは中のデータは丸見え:通信外でも暗号が必要な場面も
暗号化は「使い方を間違えると安心感だけが先行する」技術でもあります。
まとめ
暗号化は、データを安全に保管・送信するために、読み取れない形式へと変換する技術であり、通信・認証・データ管理などあらゆる場面で必須です。
共通鍵・公開鍵・ハッシュなどの方式を正しく理解し、目的に応じたアルゴリズムと鍵管理を設計することが安全性の鍵です。
「ただ暗号化する」ではなく、何を守り、どこで復号し、誰が鍵を持つべきかまで考え抜くのが、真に安全なシステムの基盤となります。