バリューチェーン
公開日: 2025/06/12
バリューチェーン(Value Chain)
はじめに
「顧客に価値を届けるまでのすべての活動は“価値創造の連鎖”である」──この考えに基づいた分析手法が「バリューチェーン」です。事業活動を構造化・可視化することで、自社の強みや改善点を発見でき、戦略立案・競争優位の確立に活用されます。本記事では、バリューチェーンの構成要素、活用法、代表事例までを体系的に解説します。
基本情報・概要
バリューチェーンとは、企業が製品やサービスを市場に届け、顧客に価値を提供するまでの一連の活動を機能別に整理した経営フレームワークです。1985年にマイケル・ポーターが提唱しました。
特徴:
- 活動を「主活動」と「支援活動」に分類
- 活動間の連携によって付加価値を創出
- 強み/弱みを分析して競争優位を設計
「何が利益を生み出し、どこに改善余地があるか」を把握する道具です。
バリューチェーン構成の全体像
活動分類 | 項目 | 内容の概要 |
---|---|---|
主活動 | 購買物流(Inbound Logistics) | 原材料の受け入れ、保管、仕分け |
製造(Operations) | 組立、加工、梱包などの生産工程 | |
出荷物流(Outbound Logistics) | 製品の倉庫出荷、配送、在庫管理 | |
マーケティング・販売(Marketing & Sales) | 販促活動、営業、価格戦略、チャネル設計 | |
サービス(Service) | 保守、アフターサポート、返品対応など | |
支援活動 | 企業インフラ(Firm Infrastructure) | 財務、法務、経営管理、戦略策定 |
人的資源管理(HR Management) | 採用、研修、組織設計、人材マネジメント | |
技術開発(Technology Development) | 製品・プロセス開発、IT、R&D | |
調達(Procurement) | 原材料・設備・外注先の選定と交渉 |
すべての活動がつながって“価値”を生み出すという思想が前提にあります。
深掘り解説
1. なぜバリューチェーンが重要か?
- 自社の活動を構造的に可視化できる
- コスト構造や価値源泉を特定できる
- 競争優位の源泉を分析・強化できる
- 部門横断での戦略整合が取りやすい
単なる部門別の棚卸しではなく、「価値連鎖の設計図」として活用されます。
2. 活用例と業種別アプローチ
- 製造業:原材料調達~出荷までの効率性や品質管理の強化
- IT・SaaS業:開発・導入・サポート体験の連続性とLTV向上
- 小売・流通業:物流・販売・サービスを統合したCX(顧客体験)分析
特にDX時代では、リアルとデジタルの活動をどうつなげるかが差になります。
応用・発展的な使い方
- デジタルバリューチェーン:ITを活用して各活動を自動化・連携
- 競合比較分析(ベンチマーク):自社と他社の活動の違いを比較
- 新規事業開発:提供価値の設計図としての活用(0→1プロセスの構造化)
また、サステナビリティ文脈での**「グリーン・バリューチェーン」設計**も注目されています。
よくある誤解と注意点
- 「製造業向けの分析」と誤解されがち → サービス業・IT企業にも有効
- 活動の“棚卸し”で終わってしまいがち → 改善・差別化施策に接続させることが本質
- 静的な図にせず、プロセスや顧客の視点から動的に捉える必要あり
まとめ
バリューチェーンは、企業が「どの活動で価値を生み、競争力を持ち、改善の余地があるか」を構造的に捉えるフレームワークです。特に変化が速い現代では、単体の強みではなく、活動間の連携・整合性こそが競争優位の源泉です。まずは、自社の主活動と支援活動をマッピングし、価値創出とムダの構造を可視化するところから始めてみましょう。