スレッドとは？──並行処理の基本単位とそのしくみを理解しよう

はじめに

処理の高速化、応答性の向上、大量データの並列処理…。
これらの実現には「スレッド（Thread）」という仕組みが欠かせません。
しかし、JavaScript のようなシングルスレッド言語でも非同期処理が可能なのはなぜでしょうか？
本記事では、スレッドの基本概念、プロセスとの違い、JavaScriptにおける特殊事情、マルチスレッド環境での実践などを解説します。

基本情報・概要

スレッドとは、**プロセスの中で実行される処理の流れ（実行単位）**です。
プロセスが「プログラムの実行環境」だとすれば、スレッドは「その中で動く作業者」のようなものです。

主な特徴：

• スレッドは 同一プロセス内でメモリ空間を共有（軽量）
• マルチスレッドにより 同時に複数の処理を進められる
• 並列処理・UI応答改善・並行データ処理に適している

スレッドは「同じ場所で同時に動く複数の手」と例えることができます。

比較・分類・特徴の表形式まとめ（任意）

Thread

std::thread

fork

child_process

マルチスレッドは効率的だが設計が難しく、同期制御が課題となります。

深掘り解説

✅ スレッドの基本構造（Java）

class HelloThread extends Thread {
  public void run() {
    System.out.println("Hello from another thread!");
  }
}

public class Main {
  public static void main(String[] args) {
    HelloThread t = new HelloThread();
    t.start();  // 非同期に実行される
    System.out.println("Main thread continues...");
  }
}

• start()

  メソッドにより新しいスレッドが生成・実行される

• run()

  はスレッドごとに実行される本体
• 複数スレッドが同時に動作するため、同期制御（同期化ブロック等）が重要

✅ JavaScript はシングルスレッド？

• JavaScript は原則シングルスレッド
• ただし Web Workers や Node.js の Worker Threads を使うことでマルチスレッド化可能

// Web Worker の例
const worker = new Worker('worker.js');
worker.postMessage('こんにちは');

worker.onmessage = (event) => {
  console.log('ワーカーからの返答:', event.data);
};

• メインスレッドと別スレッドで動作
• データは共有されずメッセージ経由（コピーまたは転送）

応用・発展的な使い方

• マルチコアCPUの活用：高負荷演算や並列処理の最適化
• UIスレッドとバックグラウンド処理の分離：UIの応答性確保
• スレッドプールの活用：スレッドの生成・破棄のコスト削減
• ロック・ミューテックス：複数スレッド間のデータ整合性保持

スレッド設計は性能向上のチャンスとリスクが表裏一体です。

よくある誤解と注意点（任意）

• スレッドは常に高速化するとは限らない：I/O中心の処理では逆に非効率なことも
• データ競合のリスク：共有変数へのアクセスには細心の注意を
• マルチスレッド＝マルチプロセッシングではない：メモリ構造と制御ロジックが異なる
• Node.js は非同期だがマルチスレッドではない：イベントループベースで設計されている（ただしWorker Threadsは例外）

スレッドを使う＝並列性を得る代わりに制御責任を負うということです。

まとめ

スレッドは、プログラム内で複数の処理を並行して進めるための最小実行単位です。
正しく使えば、性能向上・レスポンス改善・大規模データ処理に大きな効果を発揮します。
しかし、競合・同期・管理の難しさも伴うため、ユースケースに応じた設計と理解が求められる分野です。
JavaScript のようなシングルスレッド環境でも、ワーカーや非同期処理との違いを理解することで、並行処理の選択肢を広げることができます。