GC
公開日: 2025/06/02
GC(ガベージコレクション)とは?──使われなくなったメモリを自動で回収する仕組み
はじめに
JavaScript、Java、Python など多くのモダン言語では、開発者がメモリの確保や解放を手動で行う必要はありません。
これは、**ガベージコレクション(GC)**という仕組みによって、使われなくなったオブジェクトを自動で回収してくれるからです。
しかし「GCがあるからメモリ管理しなくていい」は大きな誤解。
本記事では、GCの仕組み、主なアルゴリズム、注意点、最適化の視点までを丁寧に解説します。
基本情報・概要
GC(Garbage Collection)は、使用されなくなったメモリ(ガベージ)を検出し、自動的に解放する仕組みです。
目的は、メモリリークや手動解放のバグからアプリを守り、開発効率を高めることです。
主な言語:
- JavaScript
- Java
- Python
- C#(.NET)
主な役割:
- 到達不能なオブジェクトの解放
- 手動解放の煩雑さからの解放
- メモリの有効活用と安定性の向上
GCは「もう使っていないけど残っているデータを、自動で掃除する仕組み」です。
比較・分類・特徴の表形式まとめ(任意)
GC方式 | 特徴 | 採用例 |
---|---|---|
参照カウント方式 | 参照数がゼロになったら即解放 | Python(一部), COM |
トレーシング方式 | ルートから到達不能なオブジェクトを回収 | Java, JavaScript, .NET |
世代別GC(Generational) | オブジェクトの寿命によって管理・最適化 | JVM(HotSpot), V8 |
増分GC(Incremental) | 小さく分けて段階的にGCを実行 | JavaScript(V8など) |
並列/並行GC | アプリと同時にGCを並行で実行(停止短縮) | G1GC(Java), V8, ChakraCore |
GCには**「どう探すか」「いつ実行するか」「どれだけ止めるか」**で多くの工夫があります。
深掘り解説
✅ JavaScript(V8)のGCモデル
V8(Chrome や Node.js のエンジン)は、世代別トレーシングGCを採用しています。
-
Young Generation(短命)
新しく生成されたオブジェクトが格納される領域
→ 頻繁に掃除(Scavenge) -
Old Generation(長命)
生き残ったオブジェクトが移動される領域
→ より重い完全スキャン(Mark-and-Sweep など)
let data = { name: "Tanaka" }; data = null; // 到達不能 → GCの対象に
にするなどで「参照を切る」と、GCの回収対象になるnull
- ただし、クロージャやDOM参照などで保持されていると回収されない
✅ GCが走るタイミングはコントロールできない
- たいていはメモリ使用量・使用頻度・ヒープ領域の閾値などに基づく
- 明示的に GC を呼ぶことは通常推奨されない(
など)global.gc()
応用・発展的な使い方
,WeakMap
によるGCに干渉しないキャッシュWeakSet
- メモリプロファイリング(Chrome DevTools, Node.jsの
)--inspect
- オブジェクトプールで再利用パターンの実装
- GCフレンドリーな設計(一時オブジェクトの削減、不要参照の早期破棄)
GCがあるからこそ、「適切に破棄できるコードの書き方」が重要になります。
よくある誤解と注意点(任意)
- GCがあるからメモリリークは起きない、は誤解:参照が残っていればGCされない
- GCは実行コストがある:止まりすぎると「GCのせいで重い」が起こる
- クロージャ・DOM・グローバル変数などに参照を残しがち:リークの温床
- 自作キャッシュやリスナーの登録解除漏れ:不要参照が生き残る典型
GC任せ=**「忘れていい」ではなく、「どうすれば回収されるかを理解すべき」**です。
まとめ
GC(ガベージコレクション)は、不要になったメモリを自動で検出・解放してくれる仕組みであり、モダンな高水準言語には欠かせない存在です。
しかし、自動であっても「どんなときにGC対象になるのか」「なぜリークが起きるのか」を理解していなければ、思わぬパフォーマンス劣化やバグに直面します。
GCの存在を“前提”とするのではなく、“活用できる設計”を目指すことが、安定かつ効率的なコードを書くカギです。