ゼロトラストモデル
公開日: 2025/06/10
ゼロトラストモデルとは?現代のセキュリティ戦略と導入のポイント
はじめに
テレワーク、クラウド利用、SaaSの普及──
企業ネットワークの境界は曖昧になり、従来の「境界防御型セキュリティ」は限界を迎えつつあります。
そこで登場したのが「ゼロトラスト(Zero Trust)」という新しいセキュリティモデルです。
本記事では、ゼロトラストの基本概念から構成要素、導入プロセス、実践上の注意点まで解説します。
基本情報・概要
ゼロトラストとは、「誰も信用しないことを前提とする」セキュリティモデルです。
社内外を問わず、すべてのアクセスに対して検証・認証・最小権限を徹底し、動的に安全を担保する仕組みです。
- 「社内=安全」「外部=危険」という前提を捨てる
- 「すべてのアクセスは検証されるべき」という思想が基本
比較・分類・特徴の表形式まとめ
モデル | 特徴 | 適している状況 |
---|---|---|
境界防御モデル(従来型) | 社内ネットワークを“城壁”として守る | オンプレ主体/固定的な勤務体制/VPN中心の場合 |
ゼロトラストモデル | すべてのアクセスを都度検証・最小権限で制御 | テレワーク/SaaS利用/多拠点/BYOD環境 |
ゼロトラストは“信頼の前提”ではなく“検証と制限”を原則とするパラダイムです。
深掘り解説
-
ゼロトラストの基本原則(The 7 Pillars)
- ユーザー認証(IDベースの強固な認証:MFAなど)
- デバイスセキュリティ(管理状態・証明書)
- アプリケーションアクセス制御
- データ保護(暗号化・DLP)
- ネットワーク監視(セグメント化・通信可視化)
- ログ管理と行動監視(SIEM/UEBA)
- ポリシー自動化と継続的評価
-
技術的構成例
- SSO + MFA(Okta, Azure AD)
- デバイス認証(Intune, JAMF)
- セキュアWebゲートウェイ(Zscaler)
- マイクロセグメンテーション(Cato, VMware NSX)
- クラウドセキュリティ(CASB, CSPM)
-
導入ステップの流れ
- 現状把握(デバイス、ユーザー、アプリ、通信)
- ポリシー策定(何を許可/拒否するか)
- 優先順位設定(クラウドアプリから段階導入)
- テスト&ロールアウト
- ログ・モニタリング体制の構築と継続運用
応用・発展的な使い方
- `BYOD(私物デバイス)対応`:ゼロトラストなら「使っていいが制限あり」の設計が可能
- `SaaS利用の安全管理`:Google Workspace/Slack/Dropboxなどを安全に運用
- `テレワークの標準化`:社外からの接続も検証制御できるため柔軟な働き方が可能
- `インシデント対応の迅速化`:常時モニタリングとログ分析により検知スピードを向上
よくある誤解と注意点
- 「すべてゼロトラストにすれば完璧」→ 段階的・対象領域ごとの導入が前提
- 「VPNをなくすことが目的」→ VPNも使い方次第では有効、重要なのは“信頼前提”の撤廃
- 「導入すればセキュリティは安心」→ 継続的なログ監視・ポリシー改善が不可欠
まとめ
ゼロトラストは“技術”ではなく、“考え方”の転換です。
企業のネットワーク・働き方・利用ツールの多様化が進むなかで、
「誰が」「どこで」「何に」「なぜ」アクセスするかを常に問うセキュリティ設計が求められています。
セキュリティと利便性を両立するアーキテクチャとして、ゼロトラストモデルはこれからの企業の“新しい常識”になるでしょう。