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株式希薄化

公開日: 2025/06/13

株式希薄化(Equity Dilution)

はじめに

スタートアップの資金調達において避けて通れないテーマが「株式希薄化(Equity Dilution)」です。これは、新たな株式発行により既存株主の持株比率が低下する現象であり、調達のたびに経営者が直面する意思決定ポイントとなります。

本記事では、株式希薄化の仕組み・影響・計算方法・戦略的考え方をわかりやすく整理します。

株式希薄化とは?

株式希薄化とは、新たに株式が発行されることによって、既存株主の相対的な持ち株比率が下がることを指します。

  • 希薄化=持株数が減るのではなく、総発行株数に対する割合が小さくなる
  • 主な要因:資金調達(新株発行)/ストックオプション発行/転換社債の行使など

「誰の会社か」が徐々に変化していく過程でもあります。

希薄化のイメージ(図解)

例)発行済株式:1,000株
新規発行:500株(投資家Aへ)
→ 総発行株数:1,500株
→ 創業者の持株比率:1000 / 1500 = 66.7%(希薄化)

新規株主が加わるたびに、既存株主の持分が相対的に減少します。

プレマネー/ポストマネーと関係

用語定義
プレマネー調達前の企業価値(発行済株式に対する評価)
ポストマネー調達後の企業価値(プレマネー+調達額)

希薄化率は 「調達額 ÷ ポストマネー」 で概算可能です。

例)プレマネー5億円/調達額1億円 → ポストマネー6億円
→ 投資家持分:1/6(16.7%)=希薄化率

希薄化の計算式(基本)

希薄化率(%) = 新規株式数 ÷ 希薄化後の総発行株数 × 100

例)
発行済株数:1000株
新規発行:300株
→ 希薄化後総数:1300株
→ 希薄化率:300 ÷ 1300 = 23.1%

ストックオプションとの関係

ストックオプション(SO)も将来の株式希薄化要因になります。

  • 事前にプール(予備枠)を確保しておくことが一般的
  • プレマネー評価時にSOプールを含めるか除外するかで交渉結果が変わる
  • 投資家は「プール込みの評価」を前提とすることが多い

SOは“見えない希薄化”として事前調整が必要です。

希薄化が与える影響

対象影響内容
創業チーム経営権・意思決定への影響。Exit時の取り分にも影響
投資家ラウンド間での比率低下 → 優先株条件・希薄化保護条項など
新規ラウンド希薄化率が高すぎると「資本効率が悪い」と見なされる

資本政策表(Cap Table)で継続的に管理し、次ラウンドを見越した設計が必要です。

よくある誤解と注意点

誤解実際のポイント
希薄化=悪成長と引き換えの“経済合理性”であり、前向きに使うべき
希薄化しても議決権は変わらない優先株/特別決議条項などで実質的な影響が出る可能性あり
調達ごとに完全に均等に分ければいい希薄化率だけでなく、評価額・将来の伸び代も含めて設計

戦略的な希薄化の考え方

  • 希薄化を許容する代わりに、大きく会社を成長させることが目的
  • 「創業者の持分を守る」のではなく、総価値を最大化し最終リターンを高める
  • シリーズA、B、C…と段階的に20〜25%ずつ希薄化するモデルが多い
  • 希薄化よりも「Exit時に残る比率 × Exitバリュエーション」が重要

まとめ

株式希薄化は、スタートアップが外部資本を取り入れる上で避けて通れない構造的な現象です。ただし、それを正しく理解し、戦略的に設計することで、“成長と持分のバランス”を両立させることが可能です。目先の比率に固執せず、将来的な企業価値と個人リターンを最大化する視点で臨みましょう。