チャーンレート(解約率)
公開日: 2025/06/16
チャーンレート(解約率)とは?SaaS・サブスク事業における継続率改善の指標と対策
はじめに
サブスクリプションやSaaSビジネスにおいて、**“顧客が継続利用するかどうか”**は最重要テーマです。
その健全性を定量的に示すのが「チャーンレート(解約率)」という指標です。
本記事では、チャーンレートの定義・計算方法・種類・改善策・誤解までを網羅的に解説します。
基本情報・概要
チャーンレート(Churn Rate)とは、一定期間内にサービスを解約した顧客や収益の割合を指します。
- サブスクリプションモデルでは、解約が収益の“減価”として直結する
- 顧客数/売上ベースでの両面から評価される
- PMF達成・LTV最大化・ARR予測など、事業の根幹に影響する指標
比較・分類・特徴の表形式まとめ
チャーンの種類 | 定義内容 | 主な特徴 |
---|---|---|
カスタマーチャーン率 | 一定期間での解約顧客数 ÷ 期初顧客数 | 顧客数ベース、継続率施策のKPIとなる |
レベニューチャーン率 | 解約・縮小による収益減 ÷ 期初MRRまたはARR | 売上ベース、売上インパクトが直感的にわかる |
グロスチャーン率 | 解約+縮小を含む全減少額 ÷ 期初MRR | ネットチャーンの構成要素(減少のみ) |
ネットチャーン率 | (期末MRR − 新規MRR) ÷ 期初MRR(拡張含む) | 成長含めた純変動、100%以上ならポジティブ |
深掘り解説
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チャーン率の計算例(カスタマーベース)
- 例:期初顧客数100社 → 月末に90社 → チャーン率 = (100−90) ÷ 100 = 10%
- この10%が“毎月消えていく顧客”の割合として扱われる
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なぜチャーン率が重要なのか?
- 高いチャーン率は、LTVの低下・ARRの減速を招く
- CACがかかる中でチャーンが高いと、回収できずに赤字構造へ
- 投資家は“スケールしないモデル”と判断しやすい
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望ましい水準の目安
- BtoC:月間チャーン5〜8%程度が一般的
- SMB向けBtoB:月間チャーン1〜3%、年次10〜30%
- エンタープライズ:年次チャーン5%以下が理想、ゼロチャーンも存在
応用・発展的な使い方
- `チャーン要因分析`:退会アンケート/カスタマーサクセスログから分類
- `コーホート別チャーン追跡`:獲得時期・属性ごとの離脱傾向を可視化
- `プロダクト別チャーン比較`:モジュール単位での継続率把握
- `チャーン予兆スコア`:ログイン頻度・サポート問い合わせなどから予測モデル構築
よくある誤解と注意点
- 「チャーン率が0ならOK」→ 成長していない可能性もある(健全な入替も重要)
- 「カスタマーチャーンだけ見ればよい」→ 高ARPU層が抜けるとレベニューチャーンは大きくなる
- 「1ヶ月だけで判断可能」→ 季節性やオンボーディング期間を考慮し、長期傾向で評価すべき
まとめ
チャーンレートは、“顧客がどれだけ価値を感じ続けているか”の定量的証明です。
解約は数字ではなく、「サイン」として捉え、プロダクト・カスタマーサクセス・マーケティングが連携して対応することが重要です。
顧客を「獲得する」だけでなく、「つなぎとめる」ことができてこそ──
持続的に積み上がる、強いサブスクモデルが完成します。