エージェンシーモデル
公開日: 2025/06/12
エージェンシーモデル(Agency Model)
はじめに
企業が自ら商品を仕入れて販売するのではなく、「売主(サプライヤー)」の代理として販売を担い、販売プラットフォーム側は取引の手数料を受け取る──この構造を「エージェンシーモデル(Agency Model)」と呼びます。AppleやAmazonなどが代表的に採用しているこのモデルは、収益構造・在庫リスク・価格主導権などにおいて特有の特徴を持ちます。
基本情報・概要
エージェンシーモデルとは、**販売プラットフォームが代理人(Agent)として商品・サービスを販売し、実際の売上は出品者に帰属するビジネスモデル**です。
特徴:
- プラットフォームは販売を支援し、手数料(マージン)を得る
- 在庫・仕入れを持たず、リスクは出品者側が負う
- 価格設定は出品者に主導権がある(直販価格制)
マーケットプレイス型やサブスクリプションECに多く採用される構造です。
エージェンシーモデルとリセラーモデルの比較表
項目 | エージェンシーモデル | リセラーモデル |
---|---|---|
所有権 | 出品者にあり、販売者は代理 | プラットフォームが商品を仕入れて保有 |
売上の帰属先 | 出品者(メーカー) | 販売者(リセラー/EC) |
販売手数料 | プラットフォームが一定比率を徴収 | 差額利益がリセラーの収益 |
在庫リスク | 出品者が負担 | リセラーが負担 |
価格主導権 | 出品者が保有(価格統制可能) | 販売者が自由に価格設定 |
代表例 | Apple App Store、Amazon Kindle、BASE | 楽天市場、家電量販店、D2Cブランド |
誰が在庫を持ち、誰が価格を決めるのかが大きな違いです。
深掘り解説
1. なぜエージェンシーモデルが注目されるのか?
- 在庫リスクがなくスケーラビリティに優れる
- 販売者が価格統制できるため、ブランド価値が維持しやすい
- 長期的なサブスクリプション課金モデルとの親和性が高い
- グローバルプラットフォームで導入しやすい
「販売支援に特化し、販売責任は委託元に持たせる」戦略的選択です。
2. エージェンシーモデルの収益構造と施策
項目 | 内容例 |
---|---|
手数料モデル | 売上の15〜30%程度を徴収 |
拡販支援 | トップ表示枠、レコメンド強化、有料プロモーション |
コンテンツガイドライン | ブランド保護のための表現・品質・価格規制 |
決済代行 | ユーザー→販売者の決済処理を代行(後日分配) |
AppleのApp Storeは典型例で、デベロッパーが価格を決め、Appleが30%を徴収する構造です。
応用・発展的な使い方
- SaaSプラットフォームでの外部アプリ課金
- オンライン講座・コンテンツ販売での講師主導価格設定
- 飲食デリバリーでの“店舗主導価格 × プラットフォーム手数料”設計
“プラットフォームを店舗の営業代理人にする”発想で幅広く展開可能です。
よくある誤解と注意点
- 「プラットフォームが売主ではない」=返品・クレームの対応権限が限られる
- 出品者の質が低いと顧客体験に悪影響 → 審査・ガイドラインが不可欠
- 価格統一が義務化される場合は、独禁法との兼ね合いに注意
まとめ
エージェンシーモデルは、プラットフォームが販売“代理”となり、商品提供者の販売を手数料で支援する構造です。在庫リスクを避けつつ、販売力を最大化するこのモデルは、コンテンツ課金やアプリ課金を中心に広く普及しています。まずは、「誰が価格を決めるのか」「誰が責任を負うのか」という観点で、自社に合った収益モデルを設計していきましょう。