スタートアップ向けバックオフィス構築
公開日: 2025/06/13
スタートアップ向けバックオフィス構築
はじめに
プロダクト開発や営業活動に注力したいスタートアップにとって、バックオフィス業務はつい後回しにされがちです。しかし、法令遵守・資金管理・組織安定の土台となるバックオフィスの構築は、企業成長を支える基盤そのものです。本記事では、フェーズ別に最小構成からスケール対応まで、スタートアップ向けの実践的なバックオフィス構築法を解説します。
バックオフィスの主な構成要素(表)
機能領域 | 具体的業務例 | 主なツール/外注先 |
---|---|---|
経理・財務 | 記帳、請求書発行、支払い、資金繰り管理 | freee、マネーフォワード、税理士法人 |
人事・労務 | 採用管理、勤怠、給与、社会保険、雇用契約 | SmartHR、ジョブカン、社労士 |
総務・庶務 | オフィス管理、備品発注、契約書整理、郵送対応 | Google Workspace、クラウドサイン |
法務・ガバナンス | 契約書レビュー、登記、知財、株主管理 | GVA tech、NINJA SIGN、弁護士 |
管理会計 | KPI可視化、予実管理、事業別PL | spreadsheet, BIツール、CFO支援 |
「経理・労務・法務」が初期構築の最重要3点です。
スタートアップフェーズ別構築の考え方
フェーズ1:創業〜プレシード期
- 法人設立・登記/口座開設/税理士選定
- 記帳・請求書発行など最小限の経理体制を整備
- クラウド会計/労務ソフトの導入で「手間の削減」を最優先
- 社員数1〜3人 → 外注とSaaSツール活用で固定費を最小に
フェーズ2:チーム10人規模
- 勤怠管理・給与計算・入退社対応の整備(労務周りが急務)
- 契約書管理・締結プロセスも電子化(クラウドサインなど)
- 銀行・税理士・社労士など外部専門家との関係構築を強化
- 月次決算体制の構築を目指す
フェーズ3:資金調達後〜20人超え
- 管理会計や資本政策、内部統制の体制強化
- 株主総会/登記変更/資本契約周りのリーガルチェック
- 事業部門と連携したPL管理・予算統制の導入
- CFOまたはコーポレート責任者の採用・任命
構築のポイントと注意点
観点 | 解説・推奨方針 |
---|---|
ツール選定 | 使いやすさ・価格・連携性で選ぶ(UIとAPIに注目) |
外注活用 | 月額顧問で経理・社労士・法務を分担 |
内製判断 | 10名以上 or 資金調達後に部分内製を検討 |
セキュリティ | 情報管理体制(Google Workspace権限設計等) |
ドキュメント化 | 業務フロー・マニュアルをNotion等で共有 |
成長スピードに合わせて「小さく始めて、崩れずスケール」が肝です。
よくある課題と解決法
課題例 | 解決策 |
---|---|
会計処理が属人化 | freee/マネーフォワード×顧問税理士で自動化+記録共有 |
社会保険対応が煩雑 | SmartHR×社労士連携で入退社手続きをオンライン化 |
契約書が紙+Excelで煩雑 | クラウドサイン×GVAなどで法務ワークフローを一元化 |
KPI・予算の管理が不透明 | GoogleスプレッドシートやLooker Studioで視覚化 |
資金調達後に体制が追いつかない | コーポレート責任者(CFO/COO)を早期に任命 |
まとめ
スタートアップにとってバックオフィス構築は、**事業を支える“目に見えないインフラ”**です。事業フェーズごとに適切な機能を段階的に整え、ツールと専門家の力を借りながら、軽く・柔軟に・透明性のある体制構築を目指しましょう。初期からの「仕組み化と分担」が、未来の成長スピードを大きく左右します。