ARR(年間経常収益)
公開日: 2025/06/13
ARR(年間経常収益)とは?SaaS・サブスクビジネスの成長を測る基本指標
はじめに
サブスクリプションモデルやSaaSビジネスの成長を測るうえで、最も重要な指標のひとつが「ARR(年間経常収益)」です。
売上の一時的な増減ではなく、“安定して積み上がる継続的な売上”を可視化するこの指標は、投資家・経営層・現場すべてにとって不可欠な共通言語です。
本記事では、ARRの定義・計算方法・類似指標との違い・応用方法・よくある誤解までを丁寧に解説します。
基本情報・概要
ARR(Annual Recurring Revenue/年間経常収益)とは、月次や年次で発生するサブスクリプション売上を年間換算した指標です。
- MRR(月間経常収益)を12倍して算出する
- 一時的な売上や初期費用を除き、“継続性のある売上”のみを対象とする
- 主にSaaS/D2Cサブスクなどのリカーリングモデルで使用される
比較・分類・特徴の表形式まとめ
指標 | 略称 | 定義 | 主な使いどころ |
---|---|---|---|
年間経常収益 | ARR | 継続売上(月額課金×12など) | 投資家報告/全社目標/LTV計算の母数 |
月間経常収益 | MRR | 月あたりの定期収益 | 直近の営業KPI/営業成績可視化 |
売上高 | Revenue | 一時的な売上・初期費用を含めた総収益 | 決算報告/キャッシュベースの損益管理 |
解約率 | Churn | 解約顧客数や収益の減少率(ARRベースで算出) | 継続率改善やリテンション施策の効果測定 |
ARRは「今、事業がどれだけ“積み上がっているか”」を示す体温計です。
深掘り解説
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ARRの計算方法
- 例1:MRRが¥1,000,000であれば、ARR = ¥1,000,000 × 12 = ¥12,000,000
- 例2:ユーザーごとの年額課金が¥100,000で顧客が100社なら、ARR = ¥10,000,000
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ARR成長の要素分解
- New ARR:新規獲得による増分
- Expansion ARR:アップセル・クロスセルによる増加
- Contraction ARR:ダウングレードなどによる減少
- Churned ARR:解約による純減
- ➤ Net New ARR = New + Expansion − Contraction − Churned
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ARRを使った経営管理
- 営業チームのKPI設計(新規ARR目標など)
- 資金調達時のバリュエーション基準(ARR × マルチプル)
- ユーザーセグメント別ARR/プロダクト別ARRの分析で重点領域を明確化
応用・発展的な使い方
- `ARRセグメント管理`:SMB/エンタープライズ別や地域別に構造を可視化
- `ARRコーホート分析`:月別獲得顧客の成長や縮小を時系列で追跡
- `ARR×LTV/CAC指標`:マーケ・営業のROIを最適化
- `プラン別ARR比較`:ベーシック・プロ・エンタープライズの収益貢献を見える化
よくある誤解と注意点
- 「ARRが売上のすべて」→ 実際には初期費用や従量課金を含めるRevenueとは異なる
- 「MRR×12すれば終わり」→ 年額課金がある場合はMRR換算に注意が必要
- 「ARRが伸びていれば安心」→ 解約率や純増要因も合わせて見る必要あり
まとめ
ARRは、SaaSやサブスクモデルにおける**“信頼できる未来の収益”の体現**です。
売上の質を示すこの指標を活用することで、経営判断、投資判断、営業戦略が一段と精緻になります。
見せかけの成長ではなく、「積み上がる収益」こそが事業の本当の価値。
ARRを正しく理解し、あなたのプロダクトの健全な成長を導いていきましょう。